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24日から6月1日の日程で開かれる世界保健機関(WHO)の年次総会(オンライン形式)に台湾が招かれていない。
台湾外交部は、総会への招待状が10日の期限を過ぎても届かなかったことを明らかにした。同外交部の報道官は「中国の悪意ある妨害は、WHOが技術的論議に台湾を参加させることができない主な障害だ」と語った。
台湾が今年も不参加になれば5年連続になる。人類の命と健康を守るため、新型コロナウイルス対策を話し合うべき場に政治対立を持ち込む中国の狭量な態度は極めておかしい。WHO事務局は台湾を招待すべきである。
中国外務省の報道官は11日の会見で、「(台湾の)民進党当局が(WHOへの)参加問題を騒ぎ立てる真の目的はコロナ禍を利用した(台湾)独立の企てで、断固反対だ」と述べた。「台湾は中国の一部」とする政治的主張が台湾排除の理由と認めたのも同然だ。
先進7カ国(G7)外相会合は5日の共同声明で、WHO総会への台湾のオブザーバー参加に支持を表明した。ブリンケン米国務長官は7日、WHOのテドロス事務局長に台湾の総会へのオブザーバー参加を求めた。
これに対し、WHO事務局の首席法務官は10日の会見で「(台湾参加の)決定権限は加盟国にあり、事務局にはない」と逃げを打った。同事務局が加盟国と言いながら中国の意向ばかりを気にしているのは異常である。
加藤勝信官房長官は11日の記者会見で台湾の参加を支持し、「国際保健課題の対応に地理的空白を生じさせるべきではない」と述べた。当然である。
米メディアの報道では、来年6月に任期が切れるWHO事務局長のテドロス氏が再選を目指しているという。同氏は昨年、中国・武漢市から新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まった際に中国の習近平政権に忖度(そんたく)して初動対応を誤った。その反省もなく中国の意向におもねるかのように台湾外しを続けている。
総会への台湾参加が実現しなければ、日本などG7諸国は6月11日からの首脳会議(サミット)で、中国の強い影響下にあるテドロス氏の再選阻止を申し合わせ、公平な運営を目指す候補を擁立するなど、WHOの抜本改革に踏み出す必要がある。
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2021年5月17日付産経新聞【主張】を転載しています